※『ふあん』の続きです。



だいじょうぶ



……ぱちり。

白い天井が視界一杯に広がる。
フランスは眠気を払うように、目を瞬かせた。
「…………ここどこ…?」
てっきり自分の家のベッドの上かと思ったが、あきらかに窓の形や部屋の様子が違う。
違うというか……
「……イギリスんち?っつおぉ?!」
なんか動いた!
恐る恐る毛布を捲りあげると、フランスと向かい合う形で丸まったイギリスの頭が見える。
なんだ、イギリスか…。坊ちゃん、そんな頭まで毛布かぶって寝たら苦しいでしょーに…。
そう思ってから。
「………なんで俺イギリスんちにいんの…?」
イギリスの頭をなでなでなでなでなでなでなでしながら、ぽつりと呟く。
「……ん…」
寝ぼけたような声が聞こえて、イギリスに目をやると、すりとフランスに擦り寄ってきた。
……か、可愛い!!
悶えながら、心の中で呟く。
ぷわわわわわわわわぁと花を散らしながらイギリスの頭をなでまくる。
ま、いっか。なんかよくわかんないけどイギリスに会えたし、可愛いし。幸せー
ずっとなで続けていると、イギリスが目を覚ました。
ゆっくりと瞼が開く。
緑の瞳がフランスを映し、驚いたようにぱちぱちと瞬きを繰り返した後、イギリスは顔を真っ赤に染めた。
何かを言いたそうに口をぱくぱくとしている。
「おはよー」
イギリスがなかなか何も言い出さないので、とりあえずフランスは挨拶をしてからイギリスの額にキスを落とした。
イギリスはキスをおとなしく受けてから、もぞもぞとフランスと同じくらいの位置まで上がってきて、フランスに抱きついた。
お。珍しい。
そう思いながら、久しぶりの感触を確かめるようにフランスもイギリスの腰に手を回すと。
イギリスがぽそりと呟いた。

「…………会いたかった」




…………………っは!!え!何今の!?幻聴!?え、違う?違うよね!?お兄さん起きてるよね!?え、寝てるの?!夢?!ちょっと待って、どっち?!これどっち!?
「おい」
「…………え?」
とてつもなく衝撃的な言葉だったため、反応が遅れた。
イギリスの声は少々不機嫌を含んでいる。
「……なんか言えよ」
「………もう一回お願いします」
「…………」
「……………出来ればこっち向いて言ってもらえたら凄く嬉しいです」
怒るかなーと思いつつも恐る恐る言ってみる。
…………………。
長い沈黙の後、イギリスがゆっくりとフランスから体を離し、フランスと向き合う形になる。
相変わらずその顔は真っ赤で。
あ。さっきの不機嫌な声って照れ隠し?、と思う。
ゆっくりと、本当にゆっくりとイギリスの目線が上に上がっていき、フランスと目が合った瞬間離された。
が。またすぐに目線がフランスに戻される。
じっと緑の瞳にフランスを映したまま、口をひらく。
「あ…、あい…た、か……」
途切れ途切れに言った後、
「……会いたかった!!」
羞恥心に耐えかねたようにまたぎゅっと抱きついてきた。
思わず抱きしめ返す。
うわ…凄い…なんか…うっわー…
しばらくもぞもぞとやっていたイギリスが、なんの反応も示さないフランスに不安になったのか、ちらり。
と。一瞬、驚いたように緑色の瞳を見開いて、それからふんわりと笑った。
「…泣くなよ」
「誰が…」
泣いてるんだよ、と言いかけた時、イギリスがフランスの頬に手を伸ばしてきた。
すっと頬をすべらせた手には、水滴がついていて。
「……あれ?」
思わず自分の頬に手をやると、確かに濡れていて。
…………あ、あれ?なんで涙なんか…嬉しいのに。イギリスが会いたかったって言ってくれて嬉しいのに。
イギリスはそんなフランスの手をとり、額にちゅっと触れるだけのキスを落とした。
「い、イギリス。…これは、その、別に悲しいとかじゃなくて…」
そんなイギリスの行動がフランスを慰めているようで、イギリスが勘違いするといけない、と思い慌てて口にすると、
正直フランス本人には何故涙が溢れてくるのか全く分からないのだが、
「分かってる」
そう返ってきて。
何も言うことが出来なくなってしまった。
イギリスの両手が伸びてきて、きゅう。と抱きしめられる。
耳元でイギリスが決心したかのように大きく息を吸い込む音が聞こえ、朝の光が差し込む静かな部屋にイギリスの声が通る。
「フランス、好きだ」
聞いたことのない、ずっと聞きたかった言葉が流れ込んできて。
フランスは思わず目を見開いた。
「好き。この二ヶ月だって、その、凄く会いたかったし。…確かに、連絡は出来なかったけど」
ちちち…鳥の声が聞こえる。
「でも、好きなんだ。だから、お、お前が…離れていくとか、俺…は、そんなの、い……嫌だ、し」
窓からの光が眩しい。
「俺は、お前が、大好きだ!!」
イギリスがぎゅっとフランスの服をつかみ、最後の方はほとんど叫ぶように言った。
ぱちり。ぱちり。
フランスは二度瞬きを繰り返してから、大きく息を吐いた。
体の力が抜ける。嬉しい。信じられない。俺だけかもって思ってた。視界が一気に明るくなる。
「…フランス、重い」
知らぬ間にイギリスの上にのしかかるような形になっていたようで、イギリスから苦情がきた。
でも、力が抜けきった体はどうしても動く気にはなれなくて。
とりあえず、言いたいことを口にした。
「イギリスだいすき。あいしてる」
すると少しの沈黙の後、不機嫌そうな声で、知ってる。とだけ返ってきた。






兄ちゃん、安心してほろりと来ちゃったようです。
そして前日何があったかは全く覚えていないようです。
なおかつイギリスはどこかにツンを忘れてきたようです←



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